Nulla riposa della vita come la vita.

PaperPool 5周年の記念展示販売用プリントが出来上がりました。雨上がりのトリエステ、人がひとりもいなくなったイタリア統一広場の風景です。トリエステの詩人、ウンベルト・サバの詩を須賀敦子が訳した一節「人生ほど、生きる疲れを癒してくれるものは、ない」の原文を一昔前のインレタで入れました。額縁は1960年以前と思われるライツ、フォコマート用のイーゼルです。いつもと違って今回はイーゼルに合わせたサイズのプリントになっています。イーゼルに入れたこの状態で販売するので一点のみ。ガラスもないので汚れた場合は布巾などで拭きながら、自然な経年を楽しんで欲しいと思います。太陽光を避けてもらえれば、それほど劣化するものではありません。展示は3月31日からの約二週間。詳しい情報はホームページで。ぜひお越しください。

場所 PAPER POOL
            
153-0052
   東京都目黒区祐天寺2-6-10 たちばなビル 2F
            TEL:03-3713-2378

FOCOLOY

Focomat + Valoy = FOCOLOY

FOCOLOYと名付けた理想の引伸機が完成しました。

Leica-umbau


信頼する修理士のKさんが手持ちのバルナックについて解説してくれました。
ストーリーが分かると愛着が増しますね。以下、Kさんの記事から引用。

画像のブラックペイントのバルナックライカは、2万番台、シリアルナンバーからA型だった物を改造した個体と推測されます。
シンクロナンバー付きでスローシャッターダイヤルは省略のIIf相当への改造。
ブラックペイント上に映える文字は全て象嵌ではなく白いペイントで「Leica DBP」と刻印されたカバーが使われていることから1950年代に改造された個体でしょう。
カメラ店で商品説明をするならばここまでの事を伝える事ができれば詳し過ぎるくらいですが、分解していくとより詳細に、さらに少々奇妙な事がわかってきました。
A型やC型、Standard等、距離計非搭載のモデルに距離計取り付けの改造を行う場合、ファインダーやアクシューを取り去った部分に穴を開けて距離計を取り付け、距離計カバーで覆います。
距離計カバーで隠れる部分には元のモデルの塗装が残されたままとなります。
今回の個体に関しては、巻き戻しレバーのA→R表示が象嵌ではなくペイントだという点が気になり分解前から予測はしていたのですが、距離計カバーを外したところ予想通りカバーを外したベース部分に塗料は載っていませんでした。
つまりはじめから距離計カバーを付けるつもりで作られたベースであり、距離計を持たないA型用のベースではない事がわかります。
当然塗装だけでなくシリアルナンバーもありませんでした。
巻き戻し表示が象嵌でなくペイントである事から、少なくともIIIc以降に作られた部品で、おそらく距離計カバーと合わせて1950年代に同時にこの個体に搭載されたと思われます。
スローシャッターは省かれている個体ですが、ベース部分にはスローシャッター搭載時に部品を通す穴が開けられており、穴の断面にも塗料が載っている事からはじめからスローシャッターの搭載を想定して加工し塗装された部品である事もわかります。
距離計を取り付けるだけであればベース部分は元のモデルの物を流用すれば済むはずですが、何故交換したのでしょう。
ベース部分を取り外すにはオーバーホールする際にも外す必要の無い細かい部品まで外す事になりかなり手間がかかります。
距離計カバーの文字がペイントなのでベース部分の文字もペイントに変える事で揃えたかったと考えられなくは無いのですが、それだけの為にはあまりに手間がかかりますし象嵌とペイントが混在した改造品も見かけるのでこの説の可能性はかなり低いと思われます。
以上の事から距離計非搭載モデルに「足していく」改造をした個体と考えるには無理があると判断しました。
逆に「引いていく」方で考えてみます。
今回の個体が改造された時期は既にIIIfが発売されておりIIIgの足音も聴こえてくるような頃と思われます。
単純にIIIfからスローシャッターを取り除けばほぼIIfになるのですから、IIIfをベースに改造された個体である可能性を考えました。
参考までに、IIfから更に距離計を取り除いたIfを分解してみると無効化されたスローガバナーが潜んでいました。
このようにデチューンされたIIIfが元になっている個体である可能性です。
IIIfがベースとなると最早、元のA型の痕跡は何もありませんがライツとしては帳簿上にA型からIIf相当に変わった旨を載せておけば良いのですから、改造代金と引き換えに預かったA型と同じシリアルナンバーを打刻した別個体に代替えした可能性は充分考えられます。
しかし基本に立ち返るとこの説にも矛盾がある事がすぐにわかりました。
距離計カバーとベースが別れる物はIIIb以前の板金モデルで既にダイキャストモデルとなっているIIIfは距離計部を含む上カバーとして丸ごと外れます。
(板金モデルであるかダイキャストモデルであるかを一番簡単に見分ける方法はマウントの両脇にエプロンがあるか無いかです。
丁度ライカM3とそれ以降のM型も同じような見た目の違いがありますが、M型は全てダイキャストです)
つまり今回の個体は板金モデルでありIIIfをベースにデチューンした物でもない事がわかります。
他にもIIIfとの差異があり、
・フィルムインジケーターが無い
・巻き上げの逆転防止の方法が爪による噛合クラッチではなくスプリングクラッチ
・Ifのように無効化されたスローガバナーが入っていない
・巻き上げ軸のラピッド噛合部がライカビット用ではなくライカピストル用
・IIIa以前のように距離計ファインダーと画角ファインダーの接眼部が離れている
やはり板金ライカを不必要なベース交換まで含めた大変な手間をかけた改造品なのではないかと前述の説に戻されてしまいました。
それでは2つの説を合わせて考えてみます。
改造ではなく代替えはしたが、交換された個体は板金ベースで作られた物であるという考えです。
今回の個体はIIIf、IIIgの時代に生まれた新DIIのような存在で率直に言って非常に中途半端なモデルなのですが、同じようなモデルが結構出回っているのである時期にライツが作り置きをしていたのではないかと想像しています。
スローシャッターは希望すれば後から追加工する事が可能ですが、ダイキャストではない時点で当時主流であったボールベアリングを用いたIIIfのような滑らかな巻き上げへの変更は不可能です。
また、ライカビットの取り付けもできません。
(ピストルは可)
それらの条件を了承できるのならば格安で代替えできる、等の提案があったのかもしれません。
今で言えばスマートフォンの機種変更のようなニュアンスでしょうか。
板金モデルの多くは丁度スローダイヤルの真下部分のボディシェルを外した位置に手罫書きのシリアルナンバーが彫られていることが多いのですが、この個体にはありませんでした。
またフィルム開口部の板材にはどのパターンの改造が来ても対応出来るように予め色々なパターンのネジ穴を開けてありました。
件のベース部には無数の穴が開いていますが、よく見ると穴の断面に、塗料が載っている穴と載っていない穴があります。
塗料が載っていない部分は塗装後に加工された事を意味します。
今回の個体は板金モデルにも関わらず距離計カバーにシンクロ端子とシンクロナンバーが搭載されています。
端子搭載のスペースを確保する為にカバーの一部が高くなっており、アクシューがカバーから飛び出します。
このアクシューを載せる台座を裏から止めている部分が後加工により塗料が剥がれ、真鍮が剥き出しになっているネジ穴です。
元々はこの台座を使うことを想定していなかった節が伺えます。
板金モデルで文字が象嵌ではなくペイントのモデルとなると一般的にはDIIIのクローム、IIIa、IIIb(IIIaとIIIbのブラックはまず見かける事はないですが)でクローム地なので黒文字が入れられています。
もしかしたらこれら3機種のブラックペイントを施したデッドストックのカバーにシンクロ搭載用のアクシュー台座を取り付ける加工をして、板金の部品も既にダイキャストの時代に入っている中で在庫一掃、使い切るつもりで組み上げたシリーズだったのかもしれません。
シンクロ対応の距離計カバーですが、シンクロ端子やシンクロナンバーが無いものの、後加工で取り付けられる余地を残したカバーを持つ個体も存在します。
おそらく50年代には既にシンクロ改造非対応のカバーは払底していて、シンクロ機能を必要としない改造依頼でもシンクロ後加工可能なカバーへの交換となったのではないかと推測します。
ボディシェルも同様でスローダイヤルを取り付ける余地を持つものだけになっていたと思われます。
シンクロ対応距離計カバーの特徴として、シャッタースピードダイヤルの周辺に見慣れないネジが一本入っています。
これはおそらく距離計カバーが別体になっている板金ベースのものは、衝撃を受けたりカメラバックの中で圧されたりすると距離計カバーが僅かに歪み、シンクロの接点がショートしてしまう可能性があるので強度を増すためにこの位置にネジ止めを設けていると思われます。
ダイキャスト用のカバーは一体化しているので強度的に充分で、IIIcからの改造品でシンクロナンバーが追加工された個体も見かけますがIIIcはダイキャストモデルの一体型カバーなのでシャッタースピードダイヤル周りのネジはあくまでシンクロナンバーが記載された板を取り付けているに過ぎず、ネジ止めの意味合いが異なります。
ちなみに今回の個体はIIf相当と呼称しましたが1/1000があります。
シャッタースピードダイヤルには「20-1」とスロー域があるはずの表記があります。
これはおそらくIIIfのダイヤルにはスローがあり、スローの無いIIf、Ifのダイヤルでは今度は1/1000が無いので仕方なくIIIf用のダイヤルを使ったものと思われます。
シャッターブレーキも付いています。
ほとんどが憶測ですが、作り置きへの代替えという説は現状考えられる一番自然な説ではないかと思っています。
当時のライツ社の状況、戦争を挟んだバルナックライカ、そしてユーザーからの要望に細かく応えていた事がリスト外の様々なモデルを生み出し、その混沌とした様相にバルナックライカの大きな魅力を感じています。

下にこれもKさんから。ライカが純正改造を受け付けていた広告です。